ブルーナボイン 2017 SPRING & SUMMER “ヤンチャのかけら”

スタートしました

 

ブルーナボイン

ヨクサル ストール

¥20,000+tax

様々なインディゴ染めされた生地を集めてつくられたアソート感のあるパッチワークのストール

キレイなスタイリングにプラスする着こなしがお薦め

 

ブルーナボイン

ブルーナボイン

ハイ!デニム

¥37,000+tax

力織機によるセルビッチデニム

黒い部分は、ウォッシャブルな革を使用

「フェリシンデニム」をベースに両膝下前身を真ん中で裂き、裏を出してつまむことによってテーパードをかけ、パッチングやタタキ、両膝を破れたままにするなど、今期Collectionのテーマである「ヤンチャ」を感じさせる激しめのリメイク加工を施したデニム

 

 

“ヤンチャのかけら”

燦々としたシャツを纏ったその男は
ソファに腰を埋めると
落ち着いた口調でゆっくりと話し始めた

仕事をしてる、という感覚ではないんです
どちらかといえば、任務に近いのかもしれません

なにをしてるか、ですか?
本当は他言無用なんですが、今日はなんだかいい日だ
あなたには、お話ししましょう

ご存じの通り、世界はあらゆる気配に満ちています

時代という名の荒波に削られて
消えてしまった気配も、なかにはあります

しかし世の中には、どんなことがあっても
守り続けなければならない気配というものがあります

わたしの仕事は
そのなかでもとりわけ大切にしなければならない
「ヤンチャ」な気配を絶やさぬようにすることです

もしもわたしが仕事を怠れば、そう遠くはない未来に
それはそれは無粋な時代がやって来るはずですから

とはいえ、特に難しいことをするわけではありません
わたしにできることといえば
その時代になくてはならない「ヤンチャのかけら」を
そこはかとなく振りまくぐらいですから

ただそれだけ
なので仕事にもこれといった呼び名はありません
敢えていうならば······「気配師」、ですかね

いま少し笑いましたか? いやいや大丈夫です
突然、ヤンチャのかけらだの気配師だのといわれても、ね
わたしだって初めはそうでしたから

すべてをお話しすれば、少しはわかっていただけると思うのですが
ヤンチャを自負するほど無粋な話はないわけで···
父がいつもいってました。「粋じゃなければヤンチャにあらず」と

ええ、父も同じ仕事をしていました
父の父、つまりわたしの祖父もです

仕事の話を口にすることはありませんでしたが
ふたりが残してくれた言葉の数々は
いまでもわたしの宝物であり、道しるべでもあります

「柱がなくても、みんなで支え合えば家は建つ」
「不完全でも中途半端じゃなければいい」···
当時は何がいいたいのかわかりませんでしたが、今はもちろん

あ、そうそう。祖父はあの時代の人にしては珍しく
ドクロに人一倍の執着を持っていました
父から聞いたところによると
己のなれの果ての姿を側に置くことで自分を戒めていたそうです
「いつお迎えが来てもいいように、後悔のないように生きなきゃならん」って

だからこの部屋にもいろいろあるでしょ
このクッションにもほら
うちの家紋みたいなものなんですよ、ドクロは

さあ、そろそろ出かける準備を
させていただいてもよろしいでしょうか

ええ、おかげさまで忙しくさせていただいてます
でも本当は、わたしの仕事が少なければ少ないほど
魅力的な世の中になるんですけどね

祖父や父が現役の頃は暇で暇で
ほとんど仕事がなかったって聞いてますから
いい時代だったんでしょうね

でもね、今年は少しだけ
ゆっくりできるんじゃないかって思ってるんです

詳しくはお話しできないんですが
とある島に、最近では珍しいぐらい真っ直ぐで
ユーモアたっぷりのクラフトマンたちがいましてね
彼らに「ヤンチャのかけら」をたっぷり振りまいておいたので

大丈夫です、気付かれてはいません
だってわたしは気配師、ですよ。
あなたにだって、ほら

そういうと彼は、机の上にあったマッチを擦って
フッ···、とひと吹き

さっきまで彼がいたことがウソのようなソファーには
ドクロのクッションだけが残されていて
その顔は心なしか笑っているようにも見えた

fin